がん治療の抗がん剤投与で、吐き気やだるさだけでなく、脱毛や爪の変形、顔のむくみなどの副作用が出ることがある。患者にとって身体的痛みに加え、外見の変化による戸惑いやショックといった精神的ダメージは大きく、外出を控えがちになるという。
国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)が実施した「抗がん剤治療による副作用の苦痛度」調査によると、女性では「脱毛」を挙げる人が最も多く、「吐き気」や「全身の痛み」を上回っていた。ほかにも「まつげや眉毛の脱毛」「顔の変色」など、外見に関する“苦痛”を訴える回答が目立つ。
また、医療技術が進歩し、外来通院で治療を受ける人が増えており、病気によって変わってしまった姿に悩む患者へのケアが一層求められている。
このような外見の悩みに応えようと、自らがんを患った女性が夫と医療用ウィッグ(かつら)を開発し、多くの患者から共感を得ている。また、病院や自治体も社会復帰をサポートする独自の取り組みを始めている。
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「髪がどんどん抜けていくことは本当につらく、ひきこもりがちになりました」と話すのは、女性がん患者にウィッグを通じた支援を行うNPO法人「日本ヘアエピテーゼ協会」(同品川区)で広報を担当する河野こずえさん。
自身も11年ほど前に乳がんを患った経験を持ち、抗がん剤治療を受けた。薬の投与から2~3週間ほどで頭髪が抜け落ちてしまい、「外出するためにかつらを探したが、これだと思えるものに巡り合えなかったんです」と吐露する。
「同じようにかつらで悩んでいる人はいるはず」。こずえさんは、当時ファッション業界で働いていた夫の愛一郎さんが、繊維メーカーとエクステンション(付け毛)の開発に携わっていたことから、医療用でおしゃれも楽しめるものを作ろうと、同協会の前身となるボランティア団体を2003年に立ち上げる。
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