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ニュースが取り上げない米デモの真実~立ち上がるアメリカの若者~

何を求めているのか

 行進を終えて公園に戻ってきた群衆は、主催者を囲んで片膝をついた。

 これは2016年にプロアメリカンフットボールのコリン・キャパニック選手が黒人差別に抗議するため国歌斉唱時に片膝をついたことで広まった。今回の抗議運動では、フロイドさんが首を押さえつけられた8分46秒間、膝をついて黙とうが行われている。

 ジョーンズさんのリードの元、「黒いことは美しい」「ブラック・ライブズ・マター」などのスローガンが再び連呼され、タスティンの集会は幕を閉じた。

 ニュースでは参加者と警察の衝突が取り上げられるが、タスティンでは行進中以外は警官の姿すら見当たらなかった。公園を通り過ぎる車から数回ほどヤジが聞こえたが、それ以外は何の騒ぎも起きなかった。

 わずか数日で企画されたとは思えないスムーズな運営だった。主催者たちに話を聞くと、みんなが知り合いだった訳ではないらしい。

 デモの広がりを見て、何か行動を起こそうとするオレンジ郡各地の高校生や大学生が友達数人とソーシャルメディアでグループを作った。そうしたグループが有機的に繋がり、お互いの活動を宣伝しあったり、デモ当日の運営を助けあったりしている。まさに21世期の草の根運動だ。

 彼らの課題は、こうしたデモを変革につなげられるかである。

 タスティンの集会では、「アクションを起こそう」という呼びかけはあったが、政府に対して具体的な要求をすることはなく、主に参加者の理解を深めることに重きが置かれていた。

 集会を宣伝していた「OC(オレンジ郡)は黒人の命と共に立つ」というインスタグラムのアカウントには、アクションを起こすための情報をまとめたグーグルドキュメントへのリンクが貼られている。そこには、抗議集会の日程、デモで逮捕された人を寄附金などで支援する方法、黒人支援団体や署名運動へのリンク、警察改革を求める嘆願書のテンプレートなどが掲載されている。

 抗議する人の大半は、警察組織の改革が必要だとの意見で一致しているが、そのビジョンにはバラツキがある。

 アメリカでは各市町村や郡などが独自の警察を運営している。そのため日々の取締りの改革などは各自治体に委ねられる。ニューヨークやロサンゼルスのようにリベラルな地域ならまだしも、保守派の力が強いオレンジ郡のような地域では反発も大きい。あれだけの規模に関わらず、タスティンでの集会に参加した市議会議員は5人中1人だった。

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