窃盗・詐欺事件で逮捕後、公判中に真犯人が逮捕され、無罪判決を受けた男性。当時の新聞記事を読みながら、取り調べについて語った【時事通信社】
裁判員制度の発足から5月21日で1年。刑事司法の変革のうねりは捜査のあり方にも及んでいる。その一つが、取り調べ全過程の録音・録画(可視化)をめぐる論議だ。日弁連や民主党国会議員の推進派は実施を求めているが、警察、検察当局は慎重な姿勢を崩していない。賛否両面から取り調べの実態と論議の動きを取り上げる。
不本意「自白」、誤認逮捕の男性
「謝りの手紙一つない。刑事を辞めたらどうかと言いたい」。窃盗容疑で誤認逮捕され、無罪判決が確定した愛媛県宇和島市の警備員の男性(61)は自分を調べた刑事への憤りを隠さない。
1999年2月1日朝、男性は出勤途中に寄ったコンビニ店の駐車場で刑事に囲まれ、自宅の捜索を受けた後、県警宇和島署へ同行を求められた。「やってないのだから、すぐに帰してくれるだろう」。求めに応じ警察の車に乗った。 警察は男性が交際中の女性宅で預金通帳と印鑑、女性の口座から50万円を引き出した疑いを持っていた。
「ビデオに写っとるのがおまえによく似とると女性が言っている」。取調室では刑事が、現金が引き出された金融機関の防犯ビデオに写った映像があると迫り、「何よりの証拠がこれよ」と男性の作業着をつまんだという。男性は「やってません」と訴えたが、刑事は「今から会社や実家を捜索したらすぐ分かる」と言った。(続)
(肩書き・名称、年齢はいずれも2010年5月1日現在のものです)
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