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地下鉄90年(3) いいことばかりではない「優等生」 ~「駅は街の地下1階」~

深刻な「ながらスマホ」

 2016年度は過去最高の約26億4200万人(1日平均724万人)が利用した東京地下鉄(東京メトロ)。利用者数は「平成不況」の時代に一時停滞したものの、最近10年ほどは増加傾向で、12年度からは毎年過去最高を更新している。過疎化やマイカー依存の進行で厳しい状況にある地域の関係者からはうらやましい状態に映るかもしれないが、「公共交通の優等生」が直面する問題は必ずしもいいことばかりではない。

 地下鉄をはじめ首都圏の鉄道に乗ると、駅や車内で「マナーポスター」が目につく。乗客の増加による混雑は客同士のトラブルにもつながり、駅員は苦情対応やトラブル処理に追われる。特にスマートフォンの普及で車内やホームなどでの「ながらスマホ」が目立つようになってからは、駅員が仲裁に立たなければならない乗客同士のトラブルが増加しているという。

 筆者も昨年、6年ぶりに東京勤務になり、地下鉄の常態的な混雑と、「他人のことなどわれ関せず」を決め込む「ながらスマホ族」の増加に驚いた。朝の国電(現JRの首都圏路線)主要駅ホームに「尻押し隊」が現れた1980年代ごろまでの殺人的ラッシュほど混雑は激しくないが、以前の地下鉄なら、通勤・通学時間帯などを除けば席に座れることが多かった。しかし、今日では土日でも座席の確保は難しいと感じる。そんな中で、周囲の状況に全く注意を払わず、立ち位置などが他人の邪魔になっていてもお構いなしでゲームなどに没頭するながらスマホ族は、ただでさえ混雑する空間をより不快に感じさせる。

 「ホームを歩きながら」のスマホは特に深刻だ。転落事故の危険があるからだ。視覚障害者がホームから転落する事故が問題になったことなどもあり、東京メトロは2017年6月、25年度末までに全線全駅にホームドアを導入する具体的な計画を発表した。整備費は約600億円に上り、経営が良くない鉄道会社であれば大きな負担となるところだ。しかし、「ホームドアが転落事故防止に有効なのは確かなので、2020年東京五輪・パラリンピックが近づく中、計画を公表しました」と東京メトロの担当者は話す。

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