2014年1月からスイスで開かれていたシリアの和平協議は2月、ひっそりと終わった。その後、何事もないかのような毎日が続いているように見えたが、4月に入ると再び毒ガスの使用が疑われ始めた。シリアの内戦は決して終わっておらず、状況が好転する見通しがないまま、住民が飢餓に見舞われる懸念さえ出始めている。食料支援の現場を預かる国連の責任者は現状をどう見ているのか。同年4月に来日した国連世界食糧計画(WFP)のモハメド・ディアブ中東局長に聞いた。(時事通信社外信部・松尾圭介)
スイスでの和平協議後、現場では何か改善されたのだろうか。この点を尋ねると局長は大きく息を吐き、「改善があったと言えばあったのだが、状況が変わったとは言えない」と表情は厳しい。
内戦下のシリアでは、全土に「包囲された町」ができてしまった。「政府軍も、反体制派も、包囲して町や村を封鎖してしまう。入ることもできない。出ることもできない。大勢の人が閉じ込められたまま今どういう状況なのか分からない」と局長は訴えた。
封鎖都市の一つが中部ホムスだ。情報さえ封鎖されて出てこない、ホムスのような町は世界から忘れられてしまう。アサド政権と国連は2月、ホムスに人道支援物資を運び込むことや民間人の脱出で合意、一時的な停戦を実現した。スイスでの和平協議を通じ、「こういう人道問題があるのだと世界が目を向けたことは、ささやかな成果と言えるかもしれない」と局長は強調した。
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