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シリア真相ルポ

首都ダマスカス

 シリアの首都ダマスカスには、ごく日常的な雰囲気が漂っていた。数千年の歴史が積み重ねられてきた旧市街の狭い路地は、夜遅くまでデートや食事を楽しむ若者たちで埋め尽くされていた。ファッショナブルなショッピングモールも、若者や家族連れで賑わいを見せている。

 父子による40年以上の独裁体制を敷くアサド政権は、エジプトやリビアなどの独裁者を追い落とした民衆運動「アラブの春」で存亡の危に立っているのではないか-。肩すかしを食らった感じだった。

 2011年3月に始まった反政府運動による死者は、訪れた1月時点で5000人を超えていた。政権が揺らぐ兆候を見逃すまいと歩き回ったが、手掛かりは簡単には得られそうもない。政権機能が集中するダマスカスには、時が静かに流れていた。(カイロ特派員・池滝和秀)

 独裁下の取材

 アラブ諸国では、地元協力者の存在が取材の成否を大きく左右する。西側諸国に比べて地縁や血縁などの人間関係で物事が動くケースが多いためだ。独裁体制下では特に、こうした協力者と信頼関係を築き上げ、水面下でうごめく真実をたぐり寄せる努力が必要だ。

 記者には、真実を伝えたいという動機がある。だが、独裁下に生きるシリア国民にとっては、不用意な外国人記者との接触は命取りになりかねない。シリアでの活動は、取材協力者の安全にも配慮しなければならなかった。

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