日本のスポーツ行政を総合的に推進する組織として2015年10月1日、スポーツ庁が発足した。その初代長官に就任したのが、鈴木大地氏(48)だ。1988年ソウル五輪の男子100メートル背泳ぎで金メダルを獲得した、文字通りのトップアスリート。現役引退後は母校の順天堂大で教授まで務め、水泳部も指導。2013年からは日本水泳連盟会長、日本オリンピック委員会(JOC)理事などの要職を歴任した。
2020年の東京五輪招致で盛り上がった日本のスポーツ界も、新国立競技場の建設計画白紙撤回や、同五輪公式エンブレムに関する問題が世間を騒がせ、プロ野球では巨人選手による野球賭博が発覚。世界を揺るがせているロシア選手のドーピング(禁止薬物使用)問題など、スポーツ界には問題、課題も多い。20年五輪・パラリンピックに向けた準備や選手の強化を円滑に進める上でも、スポーツ庁への期待、責任は膨らんでいくことが予想される。
スポーツ庁とは何をするところなのか、初代の鈴木長官は、どんな方針で取り組もうとしているのか。鈴木長官が11月26日に日本記者クラブで行った記者会見や、就任当初の発言などから、スポーツ庁の課題や目標、鈴木長官の考えに迫る。【時事ドットコム編集部 橋本誠】
スポーツにはさまざまな側面がある。学校教育の一環や、国民の健康増進といった側面。各分野のトップレベルの選手が競い合う競技に関しては、一般の関心も高く、国民への影響力も強い。芸術・文化などと同様、国際交流などを通じて世界との相互理解や友好を深めるという重要な役割も担っている。また、スポーツに関わる産業は、国や地域の経済の一端を担い、活性化する力も持っている。
したがって、スポーツ行政は多岐に渡り、国家レベルで考えても、文部科学、経済産業、厚生労働、外務の各省などがそれぞれ関わってきた。その各省がおのおの行っているスポーツ施策について省庁間の調整を図り、効率化を図るとともに、新たな相乗効果を生み出すため、全体の司令塔的な役割が期待されているのがスポーツ庁だ。鈴木長官は、主な課題として4つあると説明する。
「スポーツを通じた国民の健康の増進、日本の国際競技力の向上、スポーツを通じた日本の国際的な地位の向上、スポーツによる地域や経済の活性化ですね」
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