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コラム:勇敢な道化師 (2016/4/20)
 スポーツ千夜一夜

戦う姿勢、一直線

 スポーツ選手の不祥事が立て続けに発覚し、ため息をつきたくなる春だった。そんな中、この人の一所懸命な様子が海の向こうから伝わってくるたびに救われる思いがした。シカゴ・カブスの川崎宗則内野手のことである。

 プロ野球のダイエー、ソフトバンク時代に「ムネリン」の愛称で親しまれた川崎も、6月には35歳になる。アイドル扱いしては申し訳ないベテランの域に入ったが、米国での彼の人気はそうとうなものだ。マリナーズのシアトル、ブルージェイズのトロント、そして新天地となったカブスのシカゴ。所属チームが変わろうと、マイナーリーグに落とされようと、行く先々でファンやチームメートのハートをわしづかみにしている。

 米球界に移って5年目の今季も川崎はマイナー契約でスタートし、春季キャンプにはメジャー昇格を争う招待選手として参加した。戦う姿勢は、相変わらず一直線に突き抜けている。インディアンスとのオープン戦では、ほとんど経験のない一塁を守った。ベンチで「一塁を守れるか」と聞かれると「おとといくらいにやった」と真っ赤なうそをついて出場機会を確保。メジャーの開幕メンバーに入れないことが正式に決まった3月29日には、「まだまだ吸収して、もう一丁、もう二丁、野球が上手になるよう努力したい」と潔かった。オープン戦24試合で打率3割6分7厘、1本塁打、8打点と文句のない成績を残しても「落選」となったわけだが、悲壮感はない。

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