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コラム:番長の哀しき怒り (2016/3/7)
 スポーツ千夜一夜

 留置場では泣いていることもあるという。
 家族や財産、名誉など失ったものへの涙。それとも初めて愚行に及んだ日を思い出しての悔恨の涙だろうか。遅すぎた後悔と言うしかない。

 プロ野球の西武や巨人で活躍した清原和博氏(48)が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕されたとき、ファンは裏切られた気分だったと思う。私にもそうした感情がなくはないが、彼の現役時代の晩年に取材した経験から言えば、「悪い予感が当たった」という気持ちの方が近かった。

 初めて取材で清原選手に接したのは1990年のシーズンで、彼は西武に入団して5年目だった。私は黄金期を迎えたチームの担当記者となってうれしかっただけに、ある新聞社のベテラン記者がつぶやいた思わぬ一言は今も耳を離れない。

 「おれはね、清原が半径5メートルにいるだけでも気分が悪くなるんだよ」
 新人の年から大活躍してスターとなった若者を球団が甘やかし、天狗にさせたため鼻もちならない選手になったというのである。

 私はある日、清原選手に恐る恐る声を掛け、ロッテの村田兆治投手に関する質問をした。
 彼は練習で使ったバットなどを片付けながら、「僕にとって村田さんは雲の上の人みたいな存在ですからね…」と口を開いた。少なくとも野球に関する質問にはまじめに答えてくれたので、ほっとした記憶がある。まともに顔を向けずに話す横柄なところは気になったが、生意気盛りの青年の反応と思えば許容範囲のものだった。

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