プロ野球ソフトバンクの柳田悠岐外野手(27)とヤクルトの山田哲人内野手(23)が「トリプルスリー」を達成した。オールラウンドな攻撃力を持つ者だけが超えられる高いハードルであり、1シーズンに2人も達成者が出たことのインパクトは大きい。若い選手や将来のプロを目指す野球少年、そのコーチたちの意識を高いところへ向けさせたことだろう。
60年を超えるプロ野球の歴史の中で、3割・30本塁打・30盗塁をクリアした選手は過去8人しかいなかった。達成が難しい理由は、確実性(打率)と長打力(本塁打)、スピード(盗塁)という親和性の薄い3要素を満たさねばならないことにある。
特に難しいのは、30盗塁と30本塁打の両立だ。一般に長打力のある打者は速球に負けないパワー(骨格と筋肉)を持つため体が重く、俊足の選手にはなりにくい。今季セ、パ両リーグで30本塁打をマークした計7人のうち、5人は体重が90キロ以上。ソフトバンクの李大浩は130キロ、西武の中村剛也は102キロ、日本ハムの中田翔は100キロで、柳田も92キロある。
この中で山田だけが70キロ台(76キロ)と際立って軽い。しかも38本塁打を放ってセの本塁打王にも輝いた。細身の体をいかに使えば、打球を遠くへ飛ばせるか。日本選手の可能性を示すカギがそこにあるように思う。
山田が大事にしている練習メニューの一つがティー打撃だという。通常は斜め前方からボールをトスしてもらい、正面に置いたネットに打ち込む。しかし山田の場合は何種類ものバリエーションがある。
▽体重移動の確認をするために、数歩歩いてから打つ▽ヘッドスピードを強化するため、素早く連続して打つ▽内角球をさばくときのような腕の動きを確認するために、バランスボールに座って下半身を固定して打つ▽フォークボールなど縦の変化球のタイミングをつかむために、ワンバウンドさせたボールを打つ…。他にもトスの高さを変えたり、真横から投げてもらったり。少年野球でも基本練習となっているティー打撃に一ひねり、ふたひねりを加えたもので、特別な設備もいらないところがいい。
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