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コラム:相撲ブームの功労者 (2015/7/10)
 スポーツ千夜一夜

 大相撲の元大関貴ノ浪の音羽山親方が6月20日、43歳の若さで亡くなった。彼が活躍した1990年代は、若貴兄弟を中心とする二子山勢と、曙や武蔵丸らハワイ勢の対決を軸に相撲人気が沸騰した時代。脇役にも個性的な力士が多く、その筆頭格が貴ノ浪だった。功績を改めて振り返るには「もしも彼が二子山部屋にいなかったら」と想像するのがいいのだろう。恐らくあれほどまでの相撲ブームにはならなかったと思う。

 ご承知の通り貴ノ浪は2メートル近い長身を生かした豪快な取り口が持ち味で、気さくで話し好きなため報道陣にも人気があった。

 かつて相撲の取材現場では「一言しゃべれば50行」などと言われた。力士は口数が少ないから、談話を一つ聞けたらそれで原稿を書き上げるという気構えみたいなものだ。横綱千代の富士などは例外中の例外で、いつも秀逸な談話を提供してくれたが、記者に背を向けてまげを結い直し、無言で引き揚げるような力士もけっこういた。

 「満員御礼」が続いた相撲ブームの時代も、華やかなイメージとは裏腹に支度部屋の空気はけっこう重苦しかった。新弟子時代からマスコミに追いかけられて苦労した貴乃花は口が重かったし、若乃花もテレビのバラエティー番組で見る明るいキャラクターの人とはまるで別人だった。下を向いて小声でポツリポツリと話すから、言葉をまともに聞き取れない。巨漢力士との対戦が続いて緊張が抜けないせいか、とにかく話をする気にもなれないという様子だった。

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