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コラム:マエケンの心意気 (2015/4/30)
 スポーツ千夜一夜

 小欄で「今年は優勝も期待できる」と書いた手前、広島カープの苦戦を見ていて何となく居心地の悪い日が続いている。といっても惨敗しているわけではなく、とにかくロースコアの惜敗が多い。不安材料に挙げられていた打線の弱さが出て、あと一押しの攻めがないのだ。開幕から20試合の時点で、1点差ゲームが勝ち負け合わせて実に14。ちょっとしたことで流れが良くなりそうな気もするし、我慢のしどころという感がある。

 じれったい戦いが続く中、エースの前田健太投手がユニークな話題を提供してくれた。4月9日の試合で今季初勝利を挙げた際、白いTシャツにフェルトペンで「1勝目」の文字とともに絵を描き込み、これを観客にプレゼント。今季は本拠地のマツダスタジアムで勝利投手となったら「前田画伯」に変身し、絵を描いたTシャツをプレゼントするというプランも公表した。

 「僕は絵が得意なので」と言い切ってしまうマエケンには、なかなかのユーモア感覚としゃれっ気があるが、選手がこうしたサービス精神を見せるようになったのはそんなに古い話ではない。せいぜいここ十年ほどのことと認識している。以前はプロ野球のスターやエースといえば、お山の大将や気難しいタイプが多かった。しかし2004年の球界再編騒動あたりから選手や球界関係者の姿勢は変わった。経営難の球団が消滅する可能性や、人気にあぐらをかくことの危険性が眼前に突きつけられ、「ファンサービス」という言葉があちこちで日常的に聞かれるようになった。

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