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コラム:野球の街に幸あれ(2015/3/25)
 スポーツ千夜一夜

 今年のプロ野球は、長いこと忘れていたシーンを見られそうな期待感がある。それは何かと言えば、広島カープの優勝。米大リーグで活躍した黒田博樹投手の8年ぶりの復帰もかない、広島ファンには特に楽しみなシーズンだろう。

 米球界に残れば、黒田は今季も恐らく20億円の年俸を手にできた。広島が用意したのはその5分の1程度の条件。それでも広島を選んだ。

 「僕に残された球数はそれほど多くはない。カープで野球をする方が、1球の重みを感じられると思った。日本で投げずに野球人生を終えたら、引っかかるものがあるのではと考えた」

 40歳という年齢を考えれば、「残された球数」は確かに多くはない。とはいえドジャースとヤンキースで昨季まで5年続けて2桁勝利を挙げている。余力を持って広島に帰ったことに大きな意味がある。残るエネルギーの最も価値ある使い方は何か。そう考えて決断したのだと思う。

 広島はエースの前田健太をはじめ、昨季10勝で新人王の大瀬良大地、4年目の野村祐輔ら力のある若手がそろってきた。長い低迷期の後に明るい光が差し込んでいる。そこに黒田が加わる。米国で幅を広げた投球術やマウンドに向かう姿勢を後輩たちに受け継ぐことで、チームの勢いをさらに強めることは可能なはずだ。

 今季の広島先発陣はリーグ屈指といわれる。これほど前評判が高いのはいつ以来か、思い出すのは難しい。最後にリーグ優勝を遂げたのは1991年で、チーム防御率がセでトップの3・23だった。しかし、以降は苦しい数字が続いた。打球が飛びにくい統一球が導入された2011年まで20年もの間、ほとんどのシーズンが4点台。セの優勝チームはおおむね3点台前半だから、いかに広島がブルペン整備に苦しんできたかが分かる。最終順位でも98年から2012年まで実に15年間、Bクラスに沈み続けた。

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