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コラム:白鵬の孤独 (2015/2/19)
 スポーツ千夜一夜

 大相撲の横綱白鵬が初場所の勝負判定をめぐって審判を批判したことが物議を醸した。史上最多33度目の優勝を決めた解放感ゆえの勇み足的な発言かとも思ったが、問題の根はもう少し深いところにあるような気がしている。

 白鵬が不服としたのは、優勝を決めた13日目の稀勢の里戦の判定。左を差して寄った際、小手投げで抵抗してきた稀勢の里ともつれるように倒れ、これが「同体取り直し」とされたことに納得がいかなかったという。

 千秋楽翌日、優勝力士が開く恒例の記者会見で、白鵬はこう話した。

 「勝っている相撲ですよ。子どもが見ても分かるような相撲。なぜ取り直しになったのか。本当に悲しい思いでした。(審判には)もう少し緊張感を持ってやってもらいたい。簡単に『取り直し』っていうのは本当にやめてほしい」

 確かに流れは白鵬が優勢だった。稀勢の里は小手投げを打ったとき、土俵外に大きく傾いて体(たい)が飛んでいた。しかしスロービデオで見ると、白鵬も前方に崩れ、伸びきった右足の甲が土俵についている。そして2人はほぼ同時に落ちた。北の湖理事長(元横綱)が「横綱はそういう相撲を取ったら『もう一丁来い』という気持ちでやってほしい」と苦言を呈した通り、土俵の精神としても「同体」の判断は妥当だったと思う。

 大鵬を抜く33度目の優勝に「全勝」で花を添えた千秋楽の夜、白鵬は明け方近くまで親族らと祝杯を挙げた。記者会見の席についたときには、まだ酔いが残っていたと聞く。

 歴史的な15日間を戦い抜いた達成感と祝宴の余韻が手伝って、会見では言葉がいき過ぎた部分もあったのだろう。ただ、全体の趣旨から見ると、単純に一言文句を言っておきたかっただけという感じではない。

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