コラム:職業冒険家への道
 スポーツ千夜一夜

カナダ北極圏の凍結したマッケンジー川上。ツクトヤクツクというイヌイットの村を目指し、食料や燃料を積んだソリを引きながら歩行中(2014年1月。関口さん提供)

 2000年代に入ってから起きた変化の一つは、すぐに役立ちそうもないものの価値が認められにくくなったことだと思う。インターネットなどを通じて大量の情報が入手できるせいか、「さらに効率的に」と全てのテンポが速くなっている。だから失敗や遠回りが忌み嫌われる。無駄も徹底的に排除され、どこか息苦しい。物事の「余白」が生み出す面白みを味わえることも少なくなった。

 肩書きでいえば、冒険家は理解されにくい存在の代表格になるのだろう。しかし関口裕樹さん(27)は、そんな時代の価値観に真っ向から逆らい、「プロの冒険家」を目指して活動を続けている。

 ここ数年は厳冬期の挑戦が続いた。2013年は1月から2月にかけて自転車でアラスカを縦断(32日間、1400キロ)した。自転車は普通なら上りがつらいが、厳冬期のアラスカは「下りの方がつらい」と関口さんは断言する。標高約1500メートルのアティガン峠の気温は零下20度だったが、そこから一気に下ると零下43度まで下がったという。「ただサドルに座って下って行くのは、発狂しそうなぐらいに寒い」。北極海が生む恐ろしい寒気に突入した感触をそう表現した。

 2014年1月から2月にかけては、凍結したカナダのマッケンジー川を400キロ歩いた。ホームセンターで買った750円のソリに荷物を載せて引っ張る旅だった。極寒の荒野を突き進むのは、いったい何のため?

 「暑いか寒いかは僕にとって表面的なことでしかないんです。北極が好きで好きで、というわけでもない。とにかく厳しい自然に挑戦して、自分の限界を追究したい」

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