会員限定記事会員限定記事

コラム:仁川随想 (2014/10/20)
 スポーツ千夜一夜

 いろんな国から観客や報道陣が集まる国際スポーツ大会に行くと、お国柄や流儀というものをよく感じる。たとえば、東京でも過去に何度か開催された野球の「アジアシリーズ」。日本シリーズ優勝チームをはじめ韓国、台湾などのプロリーグ覇者が争う大会は、スタンドの応援も実にアジア的だ。かねや太鼓が乱打され、どこか雑踏を思わせる騒々しさがある。

 試合が始まる前には国歌演奏があり、私たちも記者席で起立する。ところが日本の記者の中には、君が代が流れると同時に着席する人がいつも必ず何人かいた。そういう考え方も分からなくはない。でも私は選手や両国の関係者らに敬意を払うために起立することに決めていた。スポーツイベントの場にまでスポーツと直接関係ないことへの信条を持ち込むのは、やはり無粋だ。並んだ国旗も、母国の誇りをかけてフェアプレーで挑むアスリートの象徴と解釈すれば抵抗はない。

 せめてスタジアムの中にいる間だけはさまざまな現実から距離を置き、変につっぱらずにやれないものかと思う。戦時下や深刻な国家間の紛争がある状態なら、そもそもスポーツイベントの開催自体が難しい。私は国歌が流れる数分の間は、「平和だからこそ…」と自分に再認識させ、選手の健闘を願う時間と考えるようにしている。

バックナンバー

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ