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コラム:天賦の才は惜しみなく
 スポーツ千夜一夜

オールスター第2戦の試合前に握手する全パの大谷翔平投手(左)と全セの藤浪晋太郎投手(2014年07月19日、甲子園)【時事通信社】

 高校時代の野球部の仲間に毎年会う機会があり、そのたびに思い出話に花が咲く。卒業して30年以上たつというのに、体に染み込んだ感覚は案外消えていない。先日は、かつて130キロ台後半の速球を投げていたわがチームのエースとこんな話になった。「ここがマウンドなら、ホームベースはあのドアのあたりか」。私がそう言うと、彼は「ちょうどそんな感じだね」と答え、そこから「よくもまあ、こんな(近い)距離で投げたり、打ったりしていたもんだ」「お前ら野手がちゃんと打たないから勝てなかったんだ」などと、やぶへび気味の話はあちこちへ飛んで行った。

 バッテリー間の距離は18.44メートル。打席に入ると投手がけっこう近く、大きく見える。日本ハムの大谷翔平投手が7月のオールスターゲームで日本選手として最速の162キロをマークしたが、そんな剛球と対決したらどうなるのかと想像しても、次元が違い過ぎて視覚的なものはほとんど浮かばない。目の前の空気が一瞬「グワッ」と震えるようなイメージはできるのだが。なにしろ193センチ、90キロという体でマウンドの高みから角度をつけて投げ下ろすのである。

 大谷はこの試合で23球を投げて、実に12球が160キロを超えた。球宴では結果は問われないし、誰もが「何キロ出るか」に注目して期待しているのだから、本人もよほど楽しかったのだろう。第1球を投じる前に、拍子抜けしそうなほどの笑みをこぼした。打者も大谷が速球で押してくることを分かっており、「1、2の3」のタイミングで打つ。だから何とかバットを合わせて3安打を浴びせたのはさすがにプロの力だが、変化球を交えたらそう簡単に打てるものではない。

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