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コラム:マリアの純情(2012/6/22)
 スポーツ千夜一夜

 美人アスリートが出現すると、日本では「妖精」という言葉でもてはやされることが多い。1976年モントリオール五輪の体操で10点満点を連発したナディア・コマネチ(ルーマニア)はその代表格で、高さの異なるバーを自在に行き来した段違い平行棒の演技などは、確かに宙に遊ぶ妖精を思わせるほどの驚きがあった。

 そもそも妖精とは何? 念のため事典で調べると、「欧州の民間伝承で信じられていた魔力を持つ超自然的な存在」「キリスト教が追放した異教の神々の信仰の名残り、死者の霊魂への信仰など多くの要素が結びつき、地方的な粉飾や変形が加えられて妖精伝承が成立」などとある。さらに「しばしば危害を加えて恐れられ、悪霊とも考えられていた」とも。美貌に関する言及は全く見当たらないから、「美人=妖精」を乱発させるメディアの発想は少々問題があるのかもしれない。

 最近ではテニスのマリア・シャラポワ(ロシア)がその一人だが、「妖精シャラポワ」という表現も安直で気恥ずかしく、ずっと嫌だった。188センチの長身からうなり声をあげて強打を連発する姿は、あまりに一生懸命で、不思議な魔力といった風情ではない。そして彼女が今回の全仏オープン優勝で見せたものも、妖精などという手あかのついた言葉では飾りたくない、人間的な素晴らしいドラマだった。

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