会員限定記事会員限定記事

コラム:87歳の意志(2012/3/19)
 スポーツ千夜一夜

 米大リーグの公式戦開幕が近づき、海の向こうから連日、ダルビッシュ有の動向が伝わってくる。何勝ぐらいできそうか、打者に有利なテキサス・レンジャーズの本拠地でどんな投球を見せるのか、などなど。ファンにとっては楽しみなシーズンになりそうだ。

 そんなある日の午後、かつて米大リーグのチームを相手に、日本人で初めて完投勝利を挙げた投手に会った。元巨人の大友工(たくみ)さん。小柄な体で軟式出身の大友さんが、巨人の主力投手になれたのは、強い意志と反復練習のたまものだった。87歳になった今も、意志と反復の力を信じて、新たな「強打者」と闘っている。

 大友さんは1925年、兵庫県出石町(現豊岡市)で生まれた。終戦後は運送会社の但馬貨物で軟式野球のエースとして活躍。右腕から剛速球を投げていたが、全国的には無名の存在だった。若手育成の必要性を感じて2軍の設置を決めた巨人が、うわさを聞いて声を掛けたのがきっかけで、49年にプロ入りする。

 24歳の遅いプロ入り。しかも硬球を握るのが初めてで、最初はキャッチボールさえままならなかった。「感触に慣れるように、夜も右手にボールを握ったまま、ひもで縛って眠った。目をつぶってボールを握り、投げやすい縫い目に素早く指をかける練習もした」という。

バックナンバー

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ