会員限定記事会員限定記事

コラム:17年前の光
 スポーツ千夜一夜

全豪オープンの4回戦でツォンガ(フランス)を破り、四大大会で自身初の8強入りを果たした錦織圭が歓喜する。四大大会の日本男子では、松岡修造以来、17年ぶりの快挙を果たした=2012年1月23日、オーストラリア・メルボルン【EPA=時事】

 テニスの錦織圭が1月の全豪オープンでベスト8に食い込み、四大大会の日本男子では1995年ウィンブルドン選手権で松岡修造が8強入りして以来の好成績を収めた。勝利を決めた後の姿にどこか余裕があり、22歳の日本のエースがこの先、大きなのびしろを持って羽ばたくイメージが湧いてきた。

 世界ランキング6位の強豪ツォンガ(フランス)と4回戦で対戦し、フルセットの戦いを制した。握手の後、ゆっくりと両手を上げてスタンドの歓声に応える。そしてようやく「やったあ」とばかりに右手を振り降ろして笑った。3時間半に及ぶ激闘を乗り越えた感慨の中で、おぼろげにも世界の頂を視界にとらえたことだろう。

 錦織の笑顔をテレビの画面で見ながら、悲壮感すら漂っていた17年前の松岡の姿を思い出した。ウィンブルドンで日本選手62年ぶりの8強入りを決めた時、松岡は我を忘れてコートを走り回っている。顔をくしゃくしゃにし、泣きだしそうだった。当時、彼は27歳。七転び八起きの選手生活で放った最後の光だった。

バックナンバー

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ