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コラム:不幸せな関係
 スポーツ千夜一夜

米大リーグのヤンキース時代、先発で力投する伊良部秀輝さん。1998、99年にチームの王座獲得に貢献した剛腕投手が、42歳で自ら命を絶った=1998年6月4日、米ニューヨーク(AFP=時事)

 剛腕投手として活躍した伊良部秀輝さんが自ら命を絶ったと聞き、おかしな言い方だが「そうなってしまったのか」と思った。彼が抱えていたという悩みについて週刊誌がいろいろ報じていた。家族のことや事業のこと、野球への未練。直接の原因はよく分からない。ただ何となく感じるのは、悲しい結末を生む種は、ずいぶん前に少しずつまかれていたのではないかということだ。

 起伏の多い野球人生だった。ロッテ時代には西武の清原和博選手らと数々の名勝負を演じ、ヤンキース時代もデビュー戦で勝利を挙げた時などはニューヨーカーを熱狂させた。カーテンコールに応え、ベンチから出て手を振る姿はまだ記憶の中でも色あせた感じがしない。

 しかし、マスコミとのぎくしゃくした関係が続き、表情の晴れない時も多かった。彼の悲報を伝えるニュースが生前の映像を流していたが、中には報道陣との全くかみ合わないやりとりを映したものもあった。彼の受け答えは異様なほど投げやりで、記者たちを怒らせるか、あるいは質問する意欲を失わせることを狙っているようにも見えた。そのころ伊良部投手を取材した人に聞くと、誰もが困惑した記憶があると振り返る。

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