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コラム:スポーツというエンジン
 スポーツ千夜一夜

石川遼は3度目の出場となった今年のマスターズ・トーナメントで初めて予選を突破し、20位となった=2011年4月11日、米ジョージア州オーガスタ【AFP=時事】

 「タイガーマスク現象」が話題となったのはほんの数カ月前のことだと気付き、何とも不思議な気分になった。東日本大震災が起きた3月11日を境に、その前後の記憶や日々の行動に大きな断層ができたようである。不要な明かりがついていれば自然とスイッチに手を伸ばして消してしまうし、東北の物産コーナーがあれば一つ買ってみようとも思う。きっと誰もが伊達直人的な心情になっているのではないかと想像している。

 大震災の発生とともに、プロスポーツ界のスターたちも、次々と義援金などで支援を表明した。マリナーズのイチロー外野手は1億円。レッドソックスの松坂大輔投手は100万ドル(約8100万円)。アスレチックスの松井秀喜外野手と日本ハムのダルビッシュ有投手は、いずれも5000万円と心意気を見せた。

 ゴルフの石川遼選手もすごい。こちらは今季の獲得賞金全額と、1バーディーにつき10万円を寄付するという。昨年と同程度の成績を残せば、およそ2億円になるそうだ。

 金額ではソフトバンクの孫正義社長の「個人として100億円、さらに経営の第一線を退くまで報酬の全額を寄付」や、ユニクロの柳井正社長の10億円にはかなわないが、社会への影響力という部分では、「スポーツ選手による支援」は決して負けてはいない。

 東北の復興は今後何年もかかる気の遠くなるような道のりだ。被災者にとって一番つらいのは、人々の関心が薄れ、大惨事の記憶が風化していくことだろう。スポーツ選手は、それを食い止める手助けができると思う。メディアを通じて世間の目に触れやすく、発信力も強い。彼らが声を出し続けることで、人々の意識を東北からそらないようにしていくことは十分に可能だ。

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