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コラム:快楽的人体実験
 スポーツ千夜一夜

サイクリングを楽しむ親子連れ(東京・葛西臨海公園)

 この春からデスク業務中心の生活に変わり、目がしょぼついてしかたない。いつも楽しみだった帰りの電車の読書も気が進まず、目をつぶっていることが多い。くじいた足をしばらく固定すれば関節が動きづらくなるように、コンピューターの画面を毎日長時間にらんでいれば、目のピントの調節機能は衰えるし、心身にいろんな影響が出てくるはずだ。大勢の勤め人がこのような毎日を送る社会は、人類の歴史でも過去になかったわけで、なんだか僕らは壮大な人体実験の真っただ中にいる気さえしてくる。
 40代も半ばを過ぎて体はあちこちガタがきているが、ちょっとうれしいこともあった。春の定期健診の採血でシャツをまくって腕を出したときに、看護婦さんに「いい血管です」と褒められたのだ。実は1年前にも別の病院で、同じようなことを言われている。そのときは若い看護婦さんがいきなり「素敵な血管ですね」とほほ笑んだものだから、どぎまぎしながら意味を聞き返してしまった。何のことはなく、「血管がよく見えて、注射針が刺しやすいんです」。
 血管の話の種明かしは、自転車。わたしはここ3年ほどよく自転車に乗っており、おかげで体の表面から脂身が一皮むけた感じになった。メタボの不安が遠のき、どうやら血管はそのおまけのようだ。生活習慣病が心配な人がいたら、迷わず自転車の購入を勧めたい気分になっている。

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