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コラム:いちずの行方
 スポーツ千夜一夜

2場所ぶり25度目の優勝を決め、笑顔で優勝パレードに出発する朝青龍(右)(2010年1月24日、東京・両国国技館)【時事通信社】

 引退に追い込まれた横綱朝青龍が、記者会見であまり動揺を見せなかったことに驚いた。最高位を極めた者の意地がそうさせたのだろうが、すぐさまハワイでゴルフを楽しむ変わり身の早さもすごい。役に立たない感傷はさっさと捨て、今後への英気を養うのが先決といった様子に見えた。
 過去何度も土俵上のマナー違反や常識外れの行動で物議をかもしてきた。そのたびに批判されたのに苦い経験が薬にならない。アスリートに必要な気分転換のうまさは、「のど元過ぎれば…」とは別ものだ。1月の初場所中に起こしたとされる泥酔暴行事件。相撲という伝統文化で横綱は力士の理想像なのだから、どこまでも軽率で奔放過ぎた朝青龍に対して、横綱審議委員会が「引退勧告書」を突きつけたのは当然の流れだった。
 しかし母国モンゴルの人たちは逆に、国民的英雄の朝青龍を追い出した相撲界に憤った。インターネットには「日本とは国交断絶だ」などの書き込みが相次ぎ、対日感情の悪化も懸念されたほど。日本からどの程度の情報が伝わっていたものなのか、受け止め方の差でいえば180度に近い開きがある。横綱に求める「品格」という価値観が、ともすれば全く理解不能な代物になることを感じさせられた。

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