会員限定記事会員限定記事

コラム:懐の深さは十分か
 スポーツ千夜一夜

飯塚国際大会で雨の中、バスに乗り込む選手を補助する自衛隊員【時事通信社】

 福岡県の飯塚市といえば、かつて石炭産業で栄えた町。近年は5月の「飯塚国際車いすテニス大会」がシンボルの一つになっている。1985年に始まったこの大会は、海外からも高く評価されるイベントに育ったが、今年は景気低迷による打撃を避けられず、関係者の頭を悩ませている。
 ずっと支援してくれていたスポンサー企業の撤退があったほか、九州の有力企業からの援助も年々減っているという。「大口じゃなくても、とにかく長く支援してくれる企業や個人を探さなければ…」。大会会長の前田恵理さん(55)は、懸命に知恵を絞る。
 飯塚国際大会は、車いすテニスのツアーではウィンブルドン選手権などの4大大会に次ぐ「スーパーシリーズ」の格付け。昨年の賞金総額は3万8000ドル(約350万円)だった。優勝者が一人で数百万円も獲得する一般のツアーに比べれば小さなものだが、視点を変えれば、ユニークな存在感と価値が見えてくる。
 その象徴が「イイヅカ方式」と呼ばれる独特の運営方法。市民や自治体職員、学生が運営に携わり、ボランティアは大会6日間で2000人以上にもなる。物資輸送などは自衛隊が協力。地域のタクシー会社が車いすのお客さんに対応できるよう社員を教育したり、バリアフリーに改造する店もあったりと、人々の意識に変化も生まれた。

バックナンバー

新着

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ