コラム:語れよ、野球選手
 スポーツ千夜一夜

ソフトバンクの監督に就任し、王貞治前監督(左)と握手する秋山幸二監督。偉大な前任者の後だが、意外とマイペースな印象を受ける(福岡市内のホテル)2008年10月08日【時事通信社】

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の中継画面にときおり映し出された王貞治さんの顔が、少し丸くなって健康的に見えた。「野球小僧」を自認する王さんは、サムライジャパンを応援する役目に回っても精いっぱい頑張って楽しんだことと思う。ソフトバンクの監督だった昨年までは胃がんを患った影響もあり、ほおがこけて痛々しく見えたものだ。いかに指揮官が心身をすり減らす激務にあるかを痛感させられる。

 その王さんが去ったソフトバンク・ホークス。偉大な前任者の後だけにやりにくい部分もありそうだが、秋山幸二監督は今のところかなりマイペースな印象だ。

 オープン戦で面白いことがあった。ヤフードームにやってきた楽天の野村克也監督が、試合前にベンチで例のごとくあれこれぼやくのだ。その日は「新監督なのに、秋山はなぜあいさつに来ないのか」と首をひねっていた。

 「おれが初めて監督になったときは、相手チームの監督にあいさつに行ったものやけどな。文武両道といってな、野球さえしていればいいというものでもない。野球を辞めてからの人生の方が長いんや。あいさつは人間形成の第一歩。あの王だっていつも(あいさつに)来てたやろ」

 長い話の後に、いよいよメンバー交換となった。両チームの監督がホームベース後方で行う儀式である。野村監督のぼやきが生々しく耳に残る私は、二人がどんな顔で対面するか、かたずを飲んで見ていた。すると46歳の秋山監督は、歩み寄るなり軽く帽子を上げてぺこりと一礼。それが、とんでもなく人懐っこい笑顔なのである。73歳の野村監督が一瞬、よろけたように見えた。

 秋山監督は現役時代から口数の多い方ではない。かといってぶっきらぼうなわけでもない。周囲の空気とテンションの合わないのんびり口調だったりする。春風みたいな感じとでもいおうか。

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