東京五輪の金メダルは長打力で―。宇津木麗華監督の下、小柄な打者にも飛ばす打撃を求める女子ソフトボール日本代表にあって、その一人として期待されるのが洲鎌夏子内野手(豊田自動織機)だ。北京五輪金メダリストの「女子ソフトのイチロー」こと山田恵里外野手(日立)、主砲の山本優内野手(ビックカメラ高崎)に次ぐ主力打者になれるか。2年後に向け、勝負の1年が始まった。
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洲鎌は昨年、自分の打撃を大きく変えた。身長159センチ。それまでは投手寄りで体を回転させる、いわゆる「軸を前にして」単打を狙う打撃で、「塁に出ればいいと思っていた」。
しかし昨年6月、アジアカップ前の合宿で宇津木監督から、重心を右足に残し、飛距離を出して本塁打を狙う打撃を指導された。「長打のない選手は相手がプレッシャーを感じない」が宇津木監督の考え。簡単に連打を奪えないライバル米国との大一番では、先制パンチを浴びせるにも劣勢を打開するにも長打力が必要だ。長打があれば相手投手の配球や守り方にも迷いを誘える。「米国打線はどこからでも長打が出る」と宇津木監督。
洲鎌は1989年生まれ。東京五輪の会期中に31歳になる。五輪出場は最初で最後のチャンスかもしれないし、同時に、チームを引っ張るべき世代でもある。打撃改造はリスクを伴うが、「日本代表に入ったら、長打が打てないといけないから」と決断した。
ボールの見え方、タイミングの取り方、ボールのどこをたたくか、など打撃は大きく変わったが、国際試合が続き、生きた球を打って試しながら取り組めたため、思ったよりは早くなじめたようだ。
沖縄・知念高出身。小中学校では野球をしていたが、「女子選手は甲子園に出られないから」と高校でソフトボール部に。「小学校時代は男子より女子の方が体格がいいんで、飛ばす打撃をしていた」というから、長打狙いは初めてではないが、もちろん小学生の野球と日本代表レベルのソフトボールでは全く違う。
長い間の癖で、どうしても早く左足に重心が移りがちになるため、左足に力が入らないよう、テークバックの時に一度つま先を浮かせるようにした。これも宇津木監督の助言で、重心が残りやすくなった。
昨年は外国チームとの対戦32試合に先発し、3番を16試合、4番を4試合、5番を9試合、6番を3試合と、中軸に起用された。優勝した8月のジャパンカップでは、決勝の米国戦で一回に同点ソロを放ち、期待に応えた。
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