かつて、海外旅行のお土産と言えば、ウイスキーやブランデーだった。年配の方なら、英スコッチ・ジョニーウオーカーの「黒ラベル」をもらい、珍重した記憶を持つ層も多いだろう。時は移り、ウイスキーは外圧で低価格化が進み、量販店やスーパーで買うのが当たり前となった。逆に、世界的に見ると高価格のビールは消費が減り、「第三のビール」などが急増している。本物のビールが消滅するのではないかと、心配したくなるほどだ。(時事通信社・舟橋良治)
そんなアルコール類の市場を左右する大きな要因となっているのが、酒税だ。お酒の飲まれ方や味さえ左右しかねない酒税の現状は、健全と言えるのだろうか。一度立ち止まってじっくりと考え直す時期に来ているような気がしてならない。
スーパーや量販店、コンビニの酒類売り場に足を運ぶと、まず目に付くのはビール風味の飲料「第三のビール」だ。ビールのような味がするが、成分や製法が異なるため税金が安く、低価格で売られている。日本にしかない、一風変わった飲料だ。
2013年にビール大手5社が出荷したビールは21万6000ケース(1ケース=大瓶20本換算、前年比1.7%減)、発泡酒は5万80000ケース(6.3%減)だったのに対し、第三のビールは15万8000ケース(2.0%増)と消費が拡大した。
この「第三のビール」をめぐって企業経営を揺さぶる“事件”が14年6月に起きた。
サッポロビールは、「極ZERO(ゼロ)」が税率の低い第三のビールに該当しない可能性があるとして販売を打ち切り、税の差額分と延滞税を合わせた116億円を追加納付すると決めた。「極ZERO」は、13年6月に発売してヒット商品となっていた。国税庁の照会を踏まえて販売をやめたが、14年7月に発泡酒に切り替え、値上げして販売を再開した。
こうした混乱を生む背景となっている酒税について、明治時代までさかのぼって、おさらいしておきたい。
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