投打の二刀流で躍動した米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手がア・リーグ最優秀選手(MVP)に輝いた快挙を、王貞治さん(81)=プロ野球ソフトバンク球団会長兼特別チームアドバイザー=が絶賛した。打者で46本塁打、投げては9勝。通算868本を誇る「世界の本塁打王」も、その活躍に驚き、感心しきりだ。時事通信の単独インタビューで、大谷の魅力やさらなる期待感などを熱い口調で語った。(聞き手・時事通信福岡支社編集部 近藤健吾)
◇ ◇ ◇
―本塁打王こそ逃しましたが、日本人の大谷選手が大リーグで46本。どうご覧になられていますか。
すごいねえ。とにかく球を飛ばすのは日本にいる時から分かっていたけど、あのメジャーであれだけの本数を打つとは思わなかった。ましてや二刀流でやっていて、あれだからね。特に夏場はすごかったですよ。8月くらいに量産したでしょ。あの頃は本当に、「きょうも打つんじゃないか」という感じで見ていて、ホームランを増産していた。
―今季の活躍を、どう評価していますか。
日本の選手がホームラン争いに加わるということ自体、彼ら(米国のファンや選手たち)には想定外だったと思う。首位打者争いなら分かるが、ホームラン王争いというのは、彼らにしてみれば、そんなことはこれからも未来永劫(えいごう)ないと思っていたことだと思う。ましてや、ずっとトップで走っていたんだから。これはすごかった。特にアメリカの人って、そういうアメリカンドリームではないけど、新しい話題は喜ぶじゃない。
◇敵意を持たせないようなムード
―投打の二刀流で野球界の常識を覆した大谷選手の魅力は、どのように映っているのでしょうか。
野球もすごいけど、人当たりというか、相手に憎まれないものを持っているよね。相手ファンからも、「大谷に打たれたらしょうがない」とか「大谷ならね」というように。何というか、和やかなムードをつくってしまう不思議な魅力があるよね。相手に敵意を持たせないというか。これは意識的にやっているわけじゃないんだろうけど、持って生まれたものだと思う。なかなかそういうことは身につけようと思って身につくものじゃないからね。人間として、ものすごい魅力になっている。
―アッパースイングとされるフォームで、本塁打を量産しました。なぜあそこまで飛距離や打球速度が出るのでしょうか。
高校時代から大きなホームランを打っていたからね。飛ばす能力は、本来は先天的なものですよ。ただ彼はアメリカに行って、ウエートトレーニングなどをして(プロに)入った頃よりも体がすごく強くなっている。だからもう、プロに入った時の細い「ひょろひょろの大谷翔平」から、ものすごくたくましくなった。アメリカに行っても体力的にも負けていない。それだけの本人の努力が、本来の素質をより強くさせて、土台をつくったと思う。
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