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震災の記憶、映像は忘れない

友人の安否確認から

 東日本大震災1年を前に、ドキュメンタリー映画が相次いで製作された。その1本、「傍(かたわら)~3月11日からの旅~」は伊勢真一監督の作品。小児がんの子どもたちを10年間撮影した「風のかたち」「大丈夫。」などで知られる伊勢さんが、毎月11日前後に被災地へ通い、回し続けたカメラで記録したものは-。(時事通信社記者 若林哲治)

 東日本大震災が起きたのは、「大丈夫。」が完成して各地で試写会が始まった頃だった。主題歌を作って歌ったミュージシャンで友人の苫米地サトロさんが、宮城県亘理町に住んでいる。安否が分からない。3日後、共通の友人である映像カメラマンの宮田八郎さんが現地へ入り、苫米地さんも家族も元気だと分かった。

 伊勢さんは「現地の映像と一緒に、歌を1曲歌ってもらってその映像も撮ってくれと頼んだ」。試写会場で流して、来場者に無事を知ってもらおうと考えたからだ。編集した映像は、「サトロ~被災地からの歌声~」としてインターネット上にも流した。

 いわば、震災後4日でできた短編ドキュメンタリー。「こうやって(被災地の)映像を見せた以上、もうちょっと責任を取らなきゃいけないかなと。それがこの映画のクランクインでした」と伊勢さん。小児がんをテーマにした作品を通して、「訳のわからないもの、理不尽なことで命を奪われる子どもたち」を見てきたことも、突然の地震と津波で家族や家を失った人たちのいる被災地へ、伊勢さんの足を向けさせた。

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