インタビューに応じる田中秀征・元新党さきがけ代表代行=東京都千代田区【時事通信社】
-指定期間は法案修正で、「原則30年」から「60年を超えることができない」と後退したが。
60年というのは、核廃棄物の(放射能が無害化する)10万年と大して変わらない。ほとんど永遠を意味する。論外だ。だいたい、公式の会議の議事録も取らず、保存期間が終わった公文書を廃棄処分にしていた官僚組織が、何を言っているのかと言いたい。今まで何でもかんでも隠してきた霞が関に『60年』なんて言う資格はない。
-「60年」だと、問題があった場合でも、その秘密に関わった官僚の責任を存命中には問えなくなる。
まさにそこだ。指定期間が長くなれば、官僚は政策立案でより無責任になる。だから、特定秘密は、原則として10年以内に解除すべきだ。どんなに長くても20年、せいぜい30年だと思う」。
-秘密指定は官僚によって恣意(しい)的に行われるという懸念がある。
一番心配しているのは、秘密を指定する個々の官僚の人格、どの程度の倫理観を持っているのかについて、われわれ一般国民には判断する術(すべ)が全くないということだ。だから、部下が秘密を漏えいした場合は、管理者も管理責任で刑事罰が問われるようにすべきだ。そうすれば、官僚は安易に秘密指定ができなくなる。誰が秘密指定したのかが、指定解除のときに分かるようにすることも必要だ。公正に指定したのであれば「異論ありません。名前は出してもらって結構です」と言うはずだ。好き勝手やって、責任は逃れたいというのは許されない。そういう問題は、安倍晋三首相もよく分かっていないのではないか。
首相の同意義務付けも意味がある。指定された特定秘密を全て持ってこさせ、総理執務室の金庫に入れておけば、官僚への抑止力になる。例えば、会社の社長が課長に「お前がやっていることは全部文書にしてこの金庫に入れておけ」と言えば、課長は勝手なことはできなくなる。社長も問題が起きたとき、「現場のことは知らない」と言い逃れできなくなる。今までも、つぶれそうな政権、霞が関からつぶしたいと思われた政権は、本当の秘密は知らされていなかったが、総理の金庫に入れさせるようにすれば、その抑止効果は大きい。
-法案が成立すると、「官僚主導」がさらに強まっていくとの見方がある。
一番の論点はそこだ。官僚組織の意向「官意」に沿って、マイナスになる情報は抑え、逆に都合のいいことは公開して、世論を誘導して政策を展開するようになりかねない。イラク戦争のときも、「イラクは大量破壊兵器を持っている」ということばかり大声で叫んだ。「そうではない」という情報もあったのに、記者クラブを通じて一方的に情報を流した。同じことが頻繁に繰り返されるのではないかと心配している。(続く)
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