インタビューに応じる田中秀征・元新党さきがけ代表代行=東京都千代田区【時事通信社】
安倍政権が今国会成立を目指す特定秘密保護法案。「運用を誤れば、戦後保守政治の屋台骨である『自由』と『民権』の価値を大きく損ない、『官権政治』を強めることになる」。旧新党さきがけ代表代行で経企庁長官を務めた田中秀征氏(73)は2013年12月、インタビューに応じ、こう警鐘を鳴らした。
-自民党の石破茂幹事長が秘密保護法案に反対するデモをテロに例えて問題となっている。
「デモはテロと本質において変わらない」とブログに書いたそうだが、デモとテロは本質において正反対だ。テロは黙ってやる。だからテロをしない人がデモをやる。「脱原発」の問題でもそうだが、きちんとした政治をすればデモは起きなくなるものだ。単なる失言だと思いたいが、もしそれが本音だったら、政治家として退場しないといけないような、取り返しがつかない発言だ。
-秘密保護法案は非常に大きなテーマなのに、唐突に国会に提出された印象がある。
突然であると同時に、内容的にも非常に粗雑。尖閣問題をめぐる日中対立の中で、国家安全保障会議(日本版NSC)設置と集団的自衛権解釈見直しとの「3点セット」として進めちゃえということなのだろうが、これは霞が関による霞が関のための法律だ。財務省・旧大蔵省は、人気のある政権ができるとそのときの景気にかかわらず、税収確保の増税をやろうとするが、今回もそれと同じ。外務省を中心とする霞が関が、安倍政権の人気に乗っかったわけだ。しかし、霞が関の言う通りの法案、政策をやろうとしてつぶれた政権は少なくない。この問題で安倍政権は手痛い打撃を受ける可能性が強い。
-法案は何が問題か。
この法案は、戦後保守政治の屋台骨である「自由」と「民権」に深く関わる。運用を誤れば、この重大な価値が損なわれ、「民権政治」を弱め、「官権政治」を強めることになる。具体的には、秘密の範囲と指定期間、そしてチェック機関の3点が問題だ。
まず秘密の範囲だが、狭ければ狭いほど良い。そして現在、「特定秘密」として指定を急ぐべきものはほとんどない。自衛隊法や国家公務員法など今ある法律の厳格運用で、当面は不足はない。それでも、どうしても必要と言うのなら、何年かかけてじっくり議論すべきだ。(続く)
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