生活の党の小沢一郎代表は時事通信のインタビューに応じ、7月の参院選では自民党が過半数を取るとの見通しを示す一方、期待先行で政権運営は安定しないと指摘。参院選後に自民党に対抗できる受け皿をつくり、衆院選での勝利を目指すと語った。インタビュー要旨は次の通り。
-7月の参院選の争点は。生活の党として何を訴えるか。
争点は、われわれの党名通り、国民の暮らしをいかにして守るかということだ。たまたま僕が(アベノミクスの危険性について)言った何日か後から(株価が)暴落した。アベノミクスと呼ばれるものは実体がない。国民の生活にはプラスにならないだけでなく、マイナスの面が大きい。
為替が乱高下しているが、円が大幅に安くなって、国民には何かプラスがあるのか。儲かるのは大手の輸出企業だけだ。この間、国民は漁業、農業、燃油、電力、飼料、食料、化学製品等々、ひたすら物価の値上がりに悩まされるだけだ。
また、労働分配率が非常に落ちている。競争力のある企業を大きくしさえすれば国民の所得として返ってくるという論理は、小泉内閣でウソだったことが証明されているが、また同じ様なことをやっている。
だから、所得が上がらず、物価だけが上がる。じゃぶじゃぶとカネがあっても、必要な人には回らず、みんなマネーゲームに回ってしまっている。
必然的に全部国民の生活にしわ寄せがくるので、わたしどもはこのことを指摘しながら、いかに暮らしを守るかを訴えていく。
命と暮らしと地域社会を守ることをスローガンにする。個別の具体策としては、アベノミクスなるものの危うさ、その中での雇用の問題。例えば、(労働者の)約35%が非正規社員になっているが、今度は「限定正社員」と言って正社員にまで非正規の仕組みを取り入れようとしている。これでは、雇用が非常に不安定になり、国民の生活プランを全く打ち砕く話になる。
久しぶりにボーナスが増えるなんて言われているけれど、それは大手の正社員の話だ。かなりの部分の人たちは給与が上がらない。雇用制度と給与所得は小泉内閣以来のことだが、密接に関連している。
それから原発の問題やTPPの問題もある。たぶん来年までに事実上の不況に陥ると思うので、消費税の問題もある。そのような命と暮らしに直接関連する問題の中から、分かりやすい大事なテーマを取り上げて訴えていきたい。
特に格差の問題。地域間格差の拡大で、地域社会はこのままだと本当にどんどんさびれていってしまうが、(安倍政権は)それでいいという考え方。その社会・経済政策の基本的な考え方がわれわれには理解できない。
-政府は成長戦略を打ち出すが。
成長政策も、(市場などは)これまた中身がないと失望している。
-それでも安倍内閣や自民党の依然として支持率は高い。野党の支持率は全般的に下がっている。
つまるところ実態はないが、何となくいいことがあるのかな、というイメージ先行ではないか。
だから今言ったような問題が現実にひしひしと感じられるようになり、マネーゲームがいろいろな被害を及ぼすことになれば、これはもう一気に下がると思う。
ついこの間まで、日本維新の会だって猛烈な支持率があった。結局、中身のないものはいずれ見破られてしまう。そこは全然心配しいていない。今、そんなに慌てる必要はない。国民はそんなにばかじゃない。いずれ僕の言っている通りになってくる。
ただ、選挙のことを言うと、残念ながら今、国民には選択肢がない状況だ。たぶん投票率も下がるだろうし、選挙の結果だけを予想して言うと、固い支持層を持っているところがどうしても強くなる。つまり自公が過半数の議席をとるだろう。
これは国民の選択肢、もう一方の受け皿がない、たまたまその結果ということだ。参院選まではそういう状態が続くかもしれないので、支持率の話は別にして、旧来からの固い基盤のあるところが勝つだろう。
-自公が過半数を取り、国政選挙は当面ないとすると、参院選後はどう野党の主張を実現していくのか。大きな再編になっていくのか。
野党の主張は実現できない。多数じゃないから。主張はするけれども、現実は多数党がやるわけだから。去年の暮れ(の衆院選で)、非自公のどの政党もみんな分かったと思うが、もう一つ踏ん切りがつかないということではないか。参院選の結果で、これじゃあどうしようもない、ますます国民にそっぽ向かれるね、ということがはっきり分かれば、そこから道が開けると思う。
きちっとした受け皿さえできれば、そのグループの基数がどんなに小さくても、全然問題じゃない。50人だろうが60人だろうが、ひとたび国民が「ああ、これが選択肢になるな」という勢力ができれば、次の衆院選は絶対に勝つ。小選挙区制でそういう仕組みにしたんだから。
自民党も300超の議席を持っていたのが(2009年衆院選で)120になっちゃった。民主党も300超が(12年衆院選で)50いくつになった。そういうものだ。
-もう一度野党が固まっていかなければならないと。
固まるって、何がなんでも一緒になればいいというものではないが、昨年末の総選挙で民主党と自由党が合併する以前の状況に、振り出しに戻っちゃった。せっかく苦労して「上がり」まで行ったのに、ファウルが出て、振り出しに戻った。しんどい話だけど、またもう一度、一つずつ階段を上がっていくしかない。老兵にはつらいけどね。
-民主党が軸か。
民主党どうこうじゃないが、一番大きいところがやる以外にない。とにかく声を掛けないとね。
-小沢代表は再三、民主党にイニシアチブをとるよう促してきたが、反応がなかった。
声は掛けましたよ、やったらどうですかと。でも、結局人間って、どうしようもなくなるまでは腹をくくれない。
-参院選が終われば、まとまるしかないとなるか。
それは分からないけど。結果を見れば、これではしょうがないねと、普通の神経ならなるんじゃないかな。
-そのときは生活がイニシアチブをとるか。
その必要はない。みんな「お山の大将」になりたがるからうまくいかない。やはり、いかにして政権を取るか、いかにして天下をと。大きく行かないとね。
-小さくなっても民主党内には意見対立がある。
意見対立がね。少数だと思うけど、自民党と似たような人もいるし。考え方が真逆ならそこはしっかり整理した方がいいんじゃないかな、民主党は。
-反自民、政権交代の旗印で戦っても、政権を取った後に党内がまとまらない。野党はどういう旗印で戦うべきか。
政権を、ただおもちゃのように欲しがるというのではダメだ。極端な言い方をすれば。だから、民主党(政権)はつぶれてしまった。自分たちの主張していたことと違うことをやったんだから、国民が愛想を尽かすのは当たり前だ。だから、言う以上は、一生懸命こういう方向で、こういう目標、理想で頑張ろうと、そこは意識を共有しないといけない。
-安倍政権は憲法改正を前面に掲げるなど若干右寄りの印象だが、内政・外交をどう見ているか。
同じ見解ですね。どの点についても。きちっとした理念や哲学で自分自身の方針、それに基づく政策、それがきちっとあって何かするって言う話なら別ですけど、何となくアベノミクスに象徴されるように、外交も何も、似たように中身がない感じがする。いわば、あんこのない饅頭みたいなものだ。
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