インタビューに答える長島昭久氏=2015年11月4日、東京・永田町の衆院第1議員会館【時事通信社】
中国が造成した人工島の周辺海域を米艦船が航行したことにより、緊張が高まる南シナ海。外交・安全保障問題に詳しい民主党の長島昭久・元防衛副大臣は時事通信のインタビューで、日本が米国などと協力し、自衛隊による南シナ海での警戒監視活動も検討すべきだとの見解を示した。発言要旨は次の通り。
◆中国の海洋進出、米が手を抜いたから
-南シナ海で中国が造成した人工島から12カイリ(約22キロメートル)以内を米艦船が航行したが、米中両国の動きをどう見るか。
2012年以降、米国は南シナ海での「航行の自由作戦」を中断した。中国が南シナ海で領有権を訴えようと人工島造成を決断したのは、これが大きな原因だろう。当時は野田政権で尖閣「国有化」のプロセスが進行中だったが、その時のオバマ政権の姿勢は「中国とはうまくやっていけるだろうから、あまり刺激しないように」という感じだった。中国は13年11月に東シナ海に防空識別圏(ADIZ)を設定し、その後、米国からは反応が無いと見て、一気に人工島の造成を進めることにしたのだろう。
中国は長期の軍事戦略に基づいて南シナ海を中国の「内海」にしようとしている。中国がじわじわ(海洋に)出てきていることは明らかで、さすがに米国もこれを黙認していたらルールに基づく国際秩序が壊されると見て、遅まきながら決断して人工島12カイリ内に米艦を入れた。
問題は二つあると思う。こうなる前に米国は何かできなかったのか、ということ。もう一つは、「航行の自由作戦」を再開したことによるネガティブ・インパクトだ。ずっと恒常的にやっていれば、国際法で認められる無害通航だし、別にどうってことのないオペレーションだった。続ける中で、中国をけん制することもできた。しかし、(米国が)いったん退いて、(中国に)出られて、(米国が)押し返すというのは、けっこうな力仕事だし、国際的な波及効果も大きい。
実際、11月4日の東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大国防相会議で共同宣言が出せなかったのは、負の波及効果の表れで、結局、この地域の国際秩序は中国の拒否権があって貫徹できないという状況に陥っているということだ。もともと、中国が原因をつくったのだが、米国が手を抜いたから中国が出てきているとも言える。(続く)
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