インタビューに答える守屋武昌・元防衛事務次官【時事通信社】
安倍政権が集団的自衛権行使を容認する閣議決定を急いだのはなぜか。守屋武昌・元防衛事務次官は時事通信のインタビューに答え、東・南シナ海への海洋進出を図る中国の軍事行動を抑止する狙いがあると指摘。「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の再改定を求める米国は、「憲法改正を待っていたら対中国で間に合わない」と判断しているとの見方を示した。発言要旨は次の通り。
-今回の閣議決定をどう評価するか。
安倍晋三首相は政権を担った当初、憲法改正に意欲を示していたが、昨秋以降、唐突に特定秘密保護法成立を目指し、その後、憲法解釈見直しによる集団的自衛権行使の議論を急がせた。政府筋の話として「日米両政府が年末までのガイドライン再改定を進めている」と報道で知り、「首相が憲法改正を思いとどまったのはこれか」と思った。自衛隊の憲法上の位置付けをはっきりさせる憲法改正は筋論であり、首相には進めてほしかった。
-再改定に間に合わせようとしたということか。
いや違う。日米が「起こるべき危機」への対応のスタート台に立ったということだ。米国がガイドライン作成を持ち掛けてくるときは、自衛隊の協力、日本全体の協力が必要なときだ。米国は本当に困ったとき、日本に助けを求めてくる。
最初のガイドライン(1978年策定)は極東ソ連軍の侵攻を抑止するためだった。2回目の新ガイドライン(97年策定)は朝鮮半島有事を想定し、「周辺事態」の際の物資輸送や補給など米軍への後方支援を盛り込んだ。
米国は、中国の「力による国際秩序の変更」の動きがやまないことに警戒感を深めている。尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の船に体当たりした頃(2010年9月)は、米国もまだそれほど中国の動きを気にはしていなかった。今は違う。日本だけでなく、東・南シナ海の域内の国々に拡大していると見ている。
-尖閣諸島周辺で日中の軍事衝突、米中衝突の可能性は。
日米両国はそのような事態が発生しないよう取り組んでいる。中国には「力による海洋支配は国際社会では認められない」と示すことが大切だろう。それが抑止力だ。(続く)
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