インタビューに応じる古賀茂明氏【時事通信社】
-選挙結果に表れた民意をどう読むか。
舛添要一氏も「段階的脱原発」を訴えていたので、原発推進派が勝ったとは言えない。これまでは『何年か先に原発ゼロ』という意見がせいぜいだったが、驚いたのは、NHKなどの出口調査で「原発即ゼロ」への支持が2割以上あったこと。あれだけ小泉さんが訴えたことの効果で、少なくとも都内では、即ゼロが市民権を得た。脱原発の機運がしぼんだわけではない。
-脱原発に向けた今後の運動の進め方は。
原発を突然ゼロにするのは無理だろうと思っている人が多いが、日本は既に「原発ゼロ」の状態にある。そこをきちんと理解してもらうことがポイントになる。今は原発ゼロで(電力需給が)一番大変な時だが、今後は自然エネルギーが増えて省エネも進み、そのコストも下がる。つまり、これからどんどん楽になってくることを国民に認識してもらうことが重要だ。原発ゼロはいばらの道ではない。風力、太陽光、バイオマスなどによって、疲弊した地域や山村に新しい産業が生まれ、大都市と地方が共存するシステムができる。脱原発は国の在り方を変えていく新しい時代の流れだという、「世界の常識」を浸透させていく必要がある。
-安倍政権の原発推進・輸出路線には海外でも懐疑的見方がある。
福島で原発事故が起きた後、ドイツのクリスティアン・ウルフ前大統領と懇談する機会があった。原発についても議論があり、大統領は「ドイツ人は科学至上主義で、科学技術の力で自然を征服して人間が豊かになるというイメージ。対して日本は、石ころ一つにも神が宿り、自然とともに生きるイメージがあった。でも、結果は逆だった。ドイツが脱原発を選択し、日本は引き続き原発推進と言っている。非常に興味深い結果が出たましたね」と話していたのが印象的だった。
海外の若者が憧れるクールジャパンとの落差も大きい。日本はアニメや「かわいい」ファッション、日本食、「おもてなし」など繊細でソフトなイメージが売りなのに、その日本の総理大臣が原発を売り歩き、これから武器も輸出するという。それを見て、外国の若者は「原発事故は終わっていないのに、何かおかしい」と言っている。原発にどう向き合うかは、「国家の人格」の問題でもある。(続く)
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