「スモールベースボール」は長打に頼らない野球の戦略の一つだが、女子ソフトボールの日本代表も東京五輪の金メダルを目指し、「スモールソフトボール」に取り組んでいる。かつて日本が得意とした小技。ソフトボール競技そのものの変容や五輪の空白で状況が大きく変わった今、宇津木麗華監督のチームづくりは、時間との闘いにもなってきた。最大のライバル米国と五輪前最後の対戦になりそうな8月30日からのジャパンカップ(群馬・高崎市ソフトボール場)では、どんな戦術で得点をもぎ取るか。
6月から8月下旬にかけ、福島市や群馬県高崎市などで断続的に行われている国内強化合宿。打撃練習で宇津木監督が選手に声を掛ける。走りながら当てるスラップ打法やセーフティーバントなどの技術を、バットを手に身振り手振りで指導する場面が目立つ。
先の日米対抗では成果も出た。6月23日の第2戦(宮城・シェルコムせんだい)の二回2死一、二塁で1番・江口未来子(豊田自動織機)が米国のエース、モニカ・アボットに対し、スラップ打法でカツンと当てて中前に適時打を放った。
同25日の第3戦(東京ドーム)は延長八回裏、無死二塁で始まったタイブレーカーで、市口侑果(ビックカメラ高崎)が走者を進めて1死三塁とし、1番の森さやか(同)の打席でヒットエンドラン。ソフトボールでは走者三塁でもヒットエンドランを使う。森がバントのように球の力を殺して投前に転がし、サヨナラ勝ちした。
宇津木監督は「今までは点の取り方が、相手次第だった。相手投手が弱ければ10点取れる。でもそうならなかったら、どうやって点を取るか。東京ドームのヒットエンドランとか、その時によっていろんなことができるようにするのが私のチームづくりだから」という。
2017年に東京五輪へ向けたチームづくりを本格化させてから、米国の強力投手陣に力負けしないよう、飛ばす力を追求。主砲・山本優(ビックカメラ高崎)を軸に長打力のある選手を集め、昨年は山崎早紀(トヨタ自動車)を代表に復帰させたほか、洲鎌夏子(豊田自動織機)らにも強いスイングを求めてきた。
昨夏の世界選手権(千葉)では準決勝と決勝で米国に惜敗したが、ともに3-4、6-7と競り合い、計21安打。山本が1本塁打1三塁打、投打に成長を続ける藤田倭(太陽誘電)も2本塁打を放った。
しかし、その後のジャパンカップも含め、攻撃は米国が一枚上だった。1番から9番まで一発があるだけでなく、好機では低めの変化球を確実にミートして内野の間を抜く。必要なら4番打者も確実にバントを決める。宇津木監督は「細かい攻撃は本来、日本の方が得意だったことなのに」と厳しい表情で話した。
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