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佐々木朗希「あと1勝」で投げず、国保監督の重い判断

誰も予想しなかった結末

 第101回全国高校野球選手権岩手大会。大船渡のエースで「163キロ右腕」の佐々木朗希投手が準決勝で完封勝利を収め、中学時代からの仲間と一緒に夢見ていた甲子園出場へ、いよいよあと1勝までこぎ着けた。だが、翌日、強豪の花巻東との決勝。甲子園切符を懸けた決戦で佐々木は最後まで、マウンドに立たなかった。

 おそらく佐々木本人もチームメートも、対戦相手も観客も、誰もが想定していなかった事態。大船渡は2―12で敗れた。決勝での登板回避を決断したのは国保陽平監督。試合終了直後、ベンチ前で報道陣に対し、開口一番「投げられる状態ではあったかもしれないが、私が判断した。(理由は)故障を防ぐためです」と説明。程なく取材に応じた佐々木は、うつむき加減で「監督の判断なので、しようがないです。高校野球をやっていたら、試合に出たい。投げたい気持ちはありました」と語った。岩手大会では公式戦最速の160キロもマークした「令和の怪物」。揺るぎのないドラフト1位候補の片りんを見せながらも、完全燃焼しないまま最後の夏が終わった。【運動部・小松泰樹】

 7月16日、大船渡は岩手大会初戦、遠野緑峰との2回戦に臨んだ。会場の花巻球場は超満員で立ち見客も。先発メンバーのアナウンスで「4番、ピッチャー、佐々木君」と告げられると「おおー」と沸き上がり、大きな拍手。大船渡は一回の攻撃で、佐々木が自ら先制の2点三塁打を放つなど3点を先取し、その裏佐々木は7球で3人を抑えた。3番打者を空振り三振に仕留めた147キロがこの日最速となった。二回で10―0と一方的になり、佐々木はその裏を投げ終えて降板。2回で19球、無安打、奪三振2。ノーシードの大船渡が甲子園に出場するには6試合を勝ち抜く必要がある。まずは、余力を十分に残す省エネ投球だった。

 14―0で五回コールド勝ち。佐々木は「球数を抑えられてよかった。みんなで、あと5勝したい。そういう思いで高校(大船渡)を選んだのだから」。上々の試運転に「去年の夏は緊張したけど、今年は楽しく、わくわくしながらプレーできている」と手応えを得た。

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