スキージャンパーの誰もがうらやむ称号を、再びつかんだ。ノルディックスキー・ジャンプ男子の小林陵侑(25)=土屋ホーム=が、6日まで行われた伝統のジャンプ週間で3季ぶり2度目の総合優勝を果たした。史上初となる2度目の完全優勝(4戦全勝)は逃したが、開幕戦から3連勝と圧倒的な強さを見せつけた。どんなジャンプ台も苦にしない対応力、条件に左右されない美しい飛躍は圧巻。来月の北京冬季五輪は堂々の大本命として、日本スキー界では1998年長野大会以来となる金メダル獲得に挑む。(時事通信ロンドン特派員 青木貴紀)
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表彰台の一番上に立ち、黄金に輝くワシのトロフィーを誇らしげに掲げた。雪が舞うオーストリアの夜空に、君が代が響き渡る。王者をたたえる何発もの花火が会場を鮮やかに彩った。取材エリアでの第一声は、「やったー!ありがとうございます!」。重圧から解放された安堵(あんど)感をにじませ、「ちょっとグランドスラム(4戦全勝)は(逃して)悔しいですけど、まあ、でも(達成するのは)普通じゃないですね、やっぱり。でも本当にうれしいです。またゴールデンイーグルを取れて」と素直に喜びを表現した。
22歳だった2018~19年シーズンに、史上3人目の4戦全勝を達成。今回も3戦目まで他を寄せ付けず、2度目の完全制覇に王手をかけて最終戦を迎えた。当然、本人も意識せずにはいられない。「1本目がめちゃめちゃ緊張した。そうなるんだろうなと思ってましたけど。たぶんグランドスラムを考えていた。超絶好調というわけじゃないので、ちゃんと意識して飛べていたことが、頭が真っ白になって(できなくなって)しまうのが大きい」
重圧は動きをわずかに狂わせた。1回目は133.5メートルで5位。首位のカール・ガイガー(ドイツ)とは6.8点差、飛距離換算で4メートル弱の差があった。2回目を飛ぶ前の気持ちは覚えていないという。ただ、「もう逆転はそんなに考えていなかった」。2回目も同じ飛距離を飛び、最終結果は5位。先に飛んだ兄の潤志郎(雪印メグミルク)に出迎えられ、「よく頑張ったな」とねぎらわれた。
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