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〔ルポ〕五輪の街リオの貧困地域~見えぬ希望~

バイシャーダは変わるか

 リオデジャネイロ市のパエス市長は五輪開催1年前の8月5日に開いた記者会見で、大会の意義について、「スポーツを通じて人の生活や街を変えることができる」と力説し、「リオは依然貧富の格差が大きい。五輪開催を通じて、できるだけ平等な社会にしたい」と市民生活の向上を改めて約束した。

 同市長は地下鉄や新交通システムの延伸による交通網の整備、スポーツ施設の新設などが、大会後に残る「遺産」になると国内外にアピールしてきた。IOCのバッハ会長も「1992年のバルセロナ五輪以来、最大の都市再開発事業となる」と最大級の賛辞を送った。

 今回の五輪のために少なくとも383億レアル(約1兆3700億円)が投資される。このお金の使い道にはリオデジャネイロ州や連邦政府も責任を持つ。バイシャーダで暮らす人々には、どんな恩恵があるだろうか。世界中から集まる人たちが、この忘れられた地域の存在に気づき、貧困問題を改めて考えるきっかけになるだろうか。

 ラモンさんに感想を求めると、「(日本の名作漫画)あしたのジョーの主人公は貧しい家で育ったが、今の日本は経済が発展し、貧困問題は解決した。難しいことではあるが、バイシャーダの生活環境もいつの日かよくなると思う」と真剣な表情で語った。

 しかし、この日見たバイシャーダに、私は希望のかけらも感じなかった。取材を終えた帰り道で、アシムさんに五輪に何を期待するか尋ねてみた。「五輪? ここに住んでいる人たちには入場チケットを買うためのお金はないよ。だから関心もない」と肩をすくめた。

 [基礎データ]ブラジルの国土は日本の22.5倍にあたる851万平方キロメートル、人口は2億40万人(2014年)。南米最大、世界でも7位の経済規模を誇り、主要産業は製造業、鉄鉱石などの鉱業、砂糖、オレンジ、コーヒー、大豆などの農牧業。主な貿易相手国は中国、米国、アルゼンチンなど。サンパウロを中心に160万人の日系人が暮らす。1人当たり国内総生産(GDP)は1万733ドル。

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