2011年の大相撲界は、八百長問題で春場所が中止されるなど、過去最大の汚点を残した。国の新法人制度導入に伴い、長年手付かずだった問題も、大改革を迫られている。「国技」は存亡の機を乗り越えられるのか。(文中の役職などは2011年12月時点のものです)
八百長の「証拠」を示す携帯メールの存在が明るみに出た11年2月2日、日本相撲協会の放駒理事長(元大関魁傑)は思わず漏らした。「こんな日が来るとは…」。親方衆の一致した思いだろう。
相撲協会がどう対処するのか。日本中が注視する中、設置された特別調査委員会(座長・伊藤滋早稲田大特命教授)による約2カ月の調査を基に、25人を「追放」した。
「クロ」の認定は、早々に八百長関与を認めた竹縄親方(元幕内春日錦)、千代白鵬、恵那司の3人の証言、携帯メールや取組の映像、携帯電話の任意提出を求めた際の態度などを分析して下された。25人のうち蒼国来と星風は関与を否定して引退勧告を拒み、解雇されて提訴している。
争点は竹縄親方らの証言の信用性だ。調査委は、複数の証言が一致した場合に「クロ」とした。調査委の村上泰弁護士は「3人がうそをついているとは思えない」と話し、「(八百長は)当事者しか知らない上、過去のことになると聞き取り以外は方法がない」と調査の正当性を強調するが、蒼国来の代理人は反論する。「他人の職を失わせるほど大事な証言なのに、押印された供述書が一つもない」
伊藤座長は調査を打ち切った5月の記者会見で「これで全部かと言われると、分からないことがいっぱいある」と、率直に語った。捜査権のない弁護士らに委ねるほかなかった調査。事態収拾のため、引かざるを得なかった「クロ」と「グレー」の線。弟子を失った師匠らは今も「守ってやりたかった」と無念さを口にし、村上弁護士は「もう嫌な思いはしたくない」とつぶやいた。
新着
会員限定