「CHESS」はロンドンで86年に初演され、3年間のロングラン公演を行った。その後、ブロードウェーをはじめ世界各地で上演されてきたが、同じ80年代に英国で作られた「キャッツ」「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」とは違い、決定版といわれる演出が確立していない。日本では2012、13年にコンサート版の公演があり、15年に初めてミュージカルとして上演された。
今回、演出・振り付けに招かれたのはロンドンのミュージカル界で活躍するニック・ウィンストン。「ロンドン初演の演出を当初手掛けていた『コーラスライン』の演出家のマイケル・ベネットが思い描いていた身体な動きによる表現を目指したい」という。
冷戦終結から30年余。米ソの対立構造を背景にしたストーリーが陳腐に感じられた時代もあったが、今はとても切実だとラミンは言う。「米国とロシアはまだ対立しているし、英国はEU離脱で分断されている。僕たちはみな、望まないチェスのゲームをやっているようなもの。国が泥仕合を続けている中で、苦しむのは民衆です。これは冷戦時代の物語ではあるけれど、冷戦そのものや政治ではなく、その中で人々が置かれている状況の話。練り直して再演するには絶好のタイミングだと思います」
ラミンは2年前、米ワシントンで上演された別バージョンの「CHESS」でアナトリーを演じた。「チャンピオンになるには、チェスに取りつかれたように没頭しなければならないんだろうね。10手以上も先を読むなんて、僕にはとてもできない。だけど、前回演じた時より、世の中の対立構造は深まり、一層不寛容になっている。分断を生み出しているトランプ米大統領を人々はなぜ支持するのか、僕も勉強して考えを深めてきたので、アナトリーの政府に対する気持ちをもっと表現できるんじゃないかと思っています」
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