日本は今、ミュージカルブーム。目や耳の肥えた観客が増え、世界トップレベルのミュージカルスターが頻繁に来日する。2011年にロンドンで行われた「オペラ座の怪人 25周年記念公演」で怪人役を演じたラミン・カリムルー(41)もその一人だ。1月末~2月には日英混成キャストによる「CHESS THE MUSICAL」に出演する。東西冷戦に翻弄される人間模様をチェスの対戦に重ねた作品への思いや、日本での活動、今後の展望などを聞いた。(文化特信部・中村正子)
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1月中旬、日本語と英語が飛び交う稽古場の熱気に満ちた空間いっぱいに、ラミンの魂の叫びのような力強い歌声が響いた。
♪ I cross over borders but I’m still there now (国境を越えても、私の心は今も祖国にある) ―「Anthem(アンセム)」―
物語の舞台は東西冷戦時代。イタリアでチェスの世界選手権が開かれた。新王者になったソ連のアナトリー(ラミン)は、前王者である米国のフレディ(ルーク・ウォルシュ)のセコンド、フローレンス(サマンサ・バークス)と恋に落ちる。アナトリーには妻子がいたが、国家を背負ってチェスをする重圧から、亡命を決意。なぜ国を捨てるのかとメディアにマイクを向けられたアナトリーが、祖国への思いを込めて歌うのが、「アンセム」だ。
「CHESS」は、アンドリュー・ロイド・ウェバーと組んで「ジーザス・クライスト・スーパースター」「エビータ」などの人気ミュージカルを世に送り出した作詞家のティム・ライスが、ポップグループ「ABBA」のベニー・アンダーソンとビョルン・ウルヴァースを作曲に迎えて作り上げた作品。1984年にコンセプトアルバムが発表され、「ワン・ナイト・イン・バンコク」などが大ヒットした。「どの曲もすばらしくて、昔から大好きだったものもある。ミュージカルアルバムとしては5本の指に入るのでは」とラミン。
昨年10月に東京で英語上演されたコンサート版「ジーザス-」ではユダ役を演じ、成河、鈴木壮麻、海宝直人らと共演。「アメリカにそのまま持って行けるくらい、彼らの英語には全く問題がなく、素晴らしかった。今回も同じようなマジックが起きると思うよ」と日本人キャストに高い信頼を寄せる。
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「CHESS」は1月25~28日に大阪・梅田芸術劇場メインホール、2月1~9日に東京国際フォーラムホールCで、英語で上演(日本語字幕付き)。問い合わせは、大阪公演が06(6377)3888、東京公演が0570(077)039。
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