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レビュー受け継ぐ無類の男役 OSK新トップ・桐生麻耶さん

舞台あればこそ

 「唯一無二の男役」。OSK日本歌劇団の新トップスターに就いた桐生麻耶さんのキャッチフレーズだ。舞台でひときわ目を引く175センチの長身と彫りの深いエキゾチックな容姿、ダイナミックなダンス。そして硬軟自在の演技力を武器に、創立100周年を間近に控える老舗レビュー劇団の看板を背負う。若手時代に劇団の解散と復活を経験した。だからこそ、舞台に懸ける姿勢は揺るぎない。(文化特信部・中村正子)

 ◇ ◇ ◇

 桐生さんは栃木県出身。大阪を拠点とするOSKに出会ったのは、陸上競技に打ち込んでいた学生時代だった。七種競技でインターハイ2位となり、推薦で体育大学に進学して間もない頃、ビデオでラインダンスと男役の群舞を見てたちまち魅了された。

 「男役という存在自体にびっくり。外で陸上をずっとやっていたので、屋内にこんな夢の世界があったのかと。生まれて初めて自分から『これをやりたい』と思った」

 OSKは1922年4月に松竹楽劇部として大阪で誕生し、笠置シヅ子や京マチ子らが輩出。パワフルでエネルギッシュなダンスに定評があり、「歌の宝塚、ダンスのOSK」として宝塚歌劇団と人気を競ったが、2003年、経営難から一時解散した。だが劇団員自ら存続活動に奔走し、市民劇団として復活。その後も運営母体が変わるなどしながら劇団の歴史をつないできた。

 桐生さんは解散当時、入団7年目。最終公演が終わったらやめるつもりで、千秋楽には使っていた化粧品を全部捨てたという。先行きが見通せない中で、OSKの復活に賭けようと決意したのは、存続活動を率いた人気スターの大貴誠さんの存在だった。

 「大貴さんが『残さなければならないの』と立ち上がらなかったら、今はなかった。とても大きな存在で、今でも舞台に立つ時、大貴さんだったらどうされるかなと考えます」

 解散の危機を通して身に染みたのは、「当たり前のことなどないということ」。当たり前のようにあった舞台がなくなった当時を知る最後の世代。舞台があることのありがたさ、舞台との向き合い方を後輩たちに伝えていくつもりだ。

 ◆桐生麻耶(きりゅう・あさや) 5月11日生まれ。栃木県真岡市出身。東京女子体育大中退。1997年にOSKに入団し、2018年にトップスター就任。

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