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【特集】五輪 あのとき

いびつだった「コリア」結成

◇政治第一、現場置き去り 2018年平昌冬季

 2018年平昌五輪の開幕まで8カ月となった17年6月、韓国の文在寅大統領が北朝鮮に南北合同チームの結成を呼び掛けた。これを契機に、五輪初となる南北合同チーム「コリア」がアイスホッケー女子に出場することになった。

 政治主導で誕生したコリアはスポーツにとどまらない意義を背負った。アイスホッケー会場は北朝鮮が参加した他競技と同じように、北朝鮮からの女性応援団が訪れただけでなく、観客席の前に立って応援をリードする韓国人も入り交じって、異様な雰囲気に包まれていた。

 初戦終了後には国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が文大統領、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の妹、金与正氏とともにコリアのベンチを訪れ、自らの成果を誇るように選手との記念写真に納まった。

 その一方、スポーツの面から見ると北朝鮮の選手を必ずベンチ入りさせる、といったいびつな取り決めがあった。コリアだけ他チームより多い人数の編成が認められるなど、不公平感もあった。

 日本はコリアに快勝した。しかし、現場を置き去りにした決定に当時、日本アイスホッケー連盟の強化本部長だった八反田孝行氏は対戦を前に「われわれにはコントロールできないこと。いろいろな思いはあるが、それを言葉にすることはできない」と不満を押し殺すように語っていた。

 20年東京五輪に向けては昨春、IOC理事会でバスケットボールなどで南北合同チームの結成が確認されたが、その後の進展は見られなかった。来夏へ延期が決まった現在も、合同チームが編成されるのかは不透明な状況だ。(2020.5.21)

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