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【特集】五輪 あのとき

「つなぎ」に衝撃の低得点

◇連覇逃したプルシェンコ 2010年バンクーバー冬季

 あれは衝撃の採点だった。2010年バンクーバー五輪のフィギュアスケート男子ショートプログラム。エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)の「技のつなぎ」が10点満点で6.80点。トップ選手に対する異例の低スコアに、周辺がざわついた。

 これには伏線があった。後年、あるフィギュア関係者が「あれは政治的な話が少し絡む。事前のキャンペーンが効いたかな」と声を潜めた。

 大会前に米国の有力な国際ジャッジ、ジョー・インマン氏が60人のジャッジらにメールを送った。プルシェンコにつなぎの動き(連続性、多様性、難しさ、質)が欠けていると示唆し、表現力などを評価する演技構成点を正しくつけるよう促した。このメールの内容をカナダ紙が報じた。

 プルシェンコの「技のつなぎ」は、国際スケート連盟(ISU)のジャッジ向けセミナーでも酷評されていた。しかし、5項目の演技構成点には選手の「顔」や実績が色濃く反映され、当時の男子のトップ選手には8点台が多く並んでいた。

 他のジャッジと比べて大きく離れた点数を出すと評価が下がるという。前出の関係者は「(インマン氏のメールを受けて)大会に集まったジャッジが腹を探り合うことになったのではないか。自分だけ外れたくないから」と言った。9人のうち2人が5点、1人が6点と「技のつなぎ」に極端な低スコアをつけたのは、腹を探り合った末か。

 プルシェンコは2位で連覇を逃した。4回転ジャンプを跳ばずに制したエバン・ライサチェク(米国)とは1.31点差。「技のつなぎ」はフリーを含めて2.55点も低かった。(2020.5.2)

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