◇得意のひねり技でけん引 2016年リオデジャネイロ
2016年リオデジャネイロ五輪の体操男子予選で、日本は4位に沈んだ。この結果、団体決勝では日本はあん馬から始まり、ゆかで終わることに。鉄棒で締めて金メダルをつかんだ04年アテネ五輪と同じ演技順を目指していたが、このローテーションが12年ぶりの栄冠への後押しとなった。
最終種目のゆかで、1番手を務めたのは五輪初出場の白井健三。この種目のスペシャリストは堂々としていた。リ・ジョンソン(後方抱え込み2回宙返り3回ひねり)、自身の名がついたシライグエン(後方伸身宙返り4回ひねり)。ひねりの多い高難度の技を鮮やかに決め、出場選手でただ一人16点台をマークした。
加藤凌平、内村航平も高得点で続いた。19歳の白井は「人生で一番心臓に悪い日だったけど、その分達成感も多い。間違いなく断トツに幸せな日」と言って笑った。
白井のひねりのすごさはどこにあったのか。当時、日本体操協会マルチサポート委員会研究部副部長を務め、運動力学を専門とする金沢大の山田哲准教授は「ひねっている時間が長い。ある程度の速さを長く維持して、ひねりの量を稼ぐという形」と解説した。
同様にひねりが得意な内村と比べると分かりやすい。同じひねりの多い技を行う際、2人の滞空時間に差はないが、白井はフロアを蹴った後、ひねる速さのトップスピードに達する時間が早く、着地する直前までほぼ同じ速度でひねり続ける。内村はトップスピードで勝るが、空中で一度体勢を整えるためそこに至るまで時間がかかり、速度を落とすのも早い。
白井のようなひねり方だと、普通は着地が乱れやすくなる。しかし、「最後に体の真下に足を持ってきて、着地の姿勢に瞬間的に持ってこられる。そこがうまい」と山田准教授。トランポリンなどで鍛えられた体幹で自分の体を操り、空中にいる時間を有効に使った。
リオ五輪後は、出来栄えが厳しく採点されるようになったルール改正や、けがに苦しんだ。東京五輪の1年延期を、本来の姿を取り戻すための追い風にできるか。(2020.5..19)
新着
会員限定