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【特集】五輪 あのとき

メダルで学んだ代表の意義

◇錦織、96年ぶりの快挙 2016年リオデジャネイロ

 2016年リオデジャネイロ五輪のテニス男子シングルス3位決定戦。ゲームカウント5―3で迎えた最終セット。マッチポイントで放った錦織圭(日清食品)の第1サーブは、ラファエル・ナダル(スペイン)の体に向かって伸びていく。 相手に体勢を整える余裕はなく、しゃがみ込んでリターンした球はアウトになった。この競技の日本勢では1920年アントワープ大会の男子シングルス準優勝の熊谷一弥、同じく男子ダブルス銀メダルの熊谷、柏尾誠一郎組以来となる、96年ぶりの歴史的なメダルが決まった。

 準決勝でアンディ・マリー(英国)に敗れた前日から気持ちを切り替え、それまで1勝9敗だった「ビッグ4」の一角を2時間49分の激戦の末に破った。メダルを首から下げた瞬間は、ずしりとした重さ以外にさまざまな思いが胸をよぎった。「日本のためというと大げさだが、それくらいの気持ちで今回はやっていたので」

 五輪の成績は、競技人生を左右する世界ランキングのポイントには反映されない。「出場する前は、ポイントがないことに関して少しためらう自分がいた。厳しいスケジュールの中で出場するのはけがをするリスクが増えるだけなんじゃないかって」。五輪後につづったブログで、素直な思いを明かした。

 それでも、08年北京、12年ロンドンに続く3度目の大舞台で初めてメダルをつかみ、学んだことがあった。「3位でこれだけ喜ぶというのも不思議な経験。今回の五輪では今までにない感情が芽生えた」。日の丸を背負って戦う意義を、本当の意味で実感できた。(2020.4.25)

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