バラク・オバマ米大統領は2016年5月27日夕、現職米大統領として初めて被爆地・広島を訪問した。オバマ氏は平和記念公園で「原爆投下の瞬間を想像せずにはいられない。歴史を直視して、何をしなければならないかを自問する共通の責任がある」と演説し、「核兵器なき世界」を追求する重要性を訴えた。1945年8月6日朝の惨劇の記憶を薄れさせてはならないとも語った。その後、参列した被爆者と言葉を交わし、抱き寄せた。
オバマ氏は2009年1月の大統領就任時から被爆地訪問を模索、7年越しの実現となった。一方、米大統領に原爆投下の事実と向き合うよう求めてきた被爆者にとっては、長年の願いがかなう歴史的訪問となった。
オバマ氏が広島市平和記念公園で行った演説全文は次の通り。
71年前の雲一つない晴れた朝、空から死が降ってきて、世界は一変した。閃光(せんこう)と火の壁が街を破壊した。そして人類が自らを滅ぼす手段を持ったことを明示した。
なぜわれわれはこの地、広島にやって来るのか。そう遠くない過去に放たれた恐ろしい力について思案するために来るのだ。10万人以上の日本人の男性、女性、子どもたち、数千人の朝鮮人、十数人の米国人捕虜を含む死者を悼むために来るのだ。彼らの魂は私たちに話し掛ける。そして彼らは私たちに内面を見つめるように求め、私たちは何者なのか、何者になるかもしれないのかを見定めるよう求めるのだ。
広島を際立たせているのは戦争の事実ではない。暴力的な紛争は原始人にも見られることが遺物から分かる。石英から刃物を作り、木からやりを作ることを学んだわれわれの祖先は、こうした道具を狩りだけでなく、同じ人類に対して使った。全ての大陸で、文明の歴史は戦争で満ちている。穀物の不足であれ金(ゴールド)への渇望であれ、国粋主義の熱狂的な扇動や宗教的な熱意であれ、帝国は興亡し、人々は支配されたり、解放されたりしてきた。節目節目で、罪のない人々が苦しみ、無数の死者を出し、彼らの名前は時間とともに忘れられた。
新着
会員限定