総電力量の約75%を原子力発電に依存している「原子力大国」フランス。その北西部にあるコタンタン半島に世界最大の使用済み核燃料、いわゆる「核のゴミ」を再処理する「ラアーグ再処理工場」がそびえ立つ。日本で本格稼働のめどが立たない青森県六ケ所村の核燃料再処理工場と基本設計が似ているため、二つは「姉妹工場」と言える存在だ。(時事通信社外信部・鈴木克彦)
ラアーグ工場では、世界各国の原発から出る使用済み核燃料が、海路や鉄道を使って厳重な監視下、日々運び込まれている。その数は年間約200回にも達するという。福島の原発事故で全ての原発が停止する前は、日本からも搬入されていた。
原発で燃料として利用されるウランやプルトニウムを使用済み核燃料から取り出す再処理は、一歩間違えれば大量の放射線を浴びる危険と常に隣り合わせ。ラアーグ工場を運営・管理する仏原子力大手アレバの協力を得て、核燃料棒の取り出し作業現場や使用済み燃料保管プール、燃料一時保管場所、制御室などを視察した。
そもそも、なぜフランスが「原子力大国」なのか。簡単におさらいしておこう。
フランスは日本と同様に天然資源に乏しく、石油供給などを主に中東に依存していた。そんな中、1973年に第1次石油危機が起き、エネルギー自給率を高めるを方針を打ち出し、原子力利用の拡大に大きく舵を切った。今は、カナダやカザフスタンといった政情が安定している国から輸入するウランを再処理して、繰り返し使用。ウランを「準国産エネルギー」と位置付けている。
著名な核科学者を輩出してきたフランスの歴史への自負もある。19世紀末に放射線を発見したアンリ・ベクレル、放射性元素の研究などで知られるピエール・キュリー、妻のマリー・キュリー(キュリー夫人、国籍はポーランド)らは、顕著な例だ。
ラアーグ再処理工場の年間処理能力は1700トン。2013年は1172トンの使用済み核燃料を再処理した。アレバの担当者によると、「世界中にある再処理された燃料のうち、75%はアレバ社が手掛けたもの」という。
使用済み核燃料を再処理した後に、再び燃料として利用する「核燃料サイクル」は、その危険性などから賛否が大きく割れている。今回の視察では、人体に与える放射線量が低いことなど、しきりに安全性を強調された。ただ、厳重な管理態勢を体感すると、極度の緊張に加え、「もし不測の事態が起きたら大丈夫なのか」という不安もよぎる。複雑な思いを感じざるを得なかった。
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